今週のNZラグビー

8/27 ワラビーズ vs オールブラックス 


15.マリ・ムレアイーナ
14.コーリー・ジェーン 13.コンラッド・スミス 11.ザック・ギルフォード
12.マアア・ノヌ 10.ダニエル・カーター
9.ピリ・ウィープ

8.キエラン・リード
7.リチャード・マッコウ(C) 6.アダム・トンプソン
5.サム・ホワイトロック 4.ブラッド・ソーン
3.オーウェン・フランクス 2.ケビン・メアラム 1.トニー・ウッドコック
  


16.アンドリュー・ホー (ケビン・メアラムと交代 72分)
17.ジョン・アフォア (オーウェン・フランクスと交代 72分)
18.アリ・ウィリアムス (アダム・トンプソンと交代 37分)
19.ビクター・ビット (キエラン・リードと交代 12分)
20.アンディー・エリス (ピリ・ウィープと交代 63分)
21.コリン・スレイド 
22.イサイア・トエアバ (ザック・ギルフォードと交代 53分) 


1.Sekope・Kepu 2.ステファン・モーアー 3.ベン・アレキサンダー
4.ダン・ベッカッマン 5.ジェイムス・ホロウェル(C)
6.ロッキー・エルソム 7.デビッド・ポコック
8.RadikeSamo

9.ウィル・ゲニア
10.クエイド・クーパー 12.PatMcCabe
11.ディグビー・イオアニ 13.アンソニー・ファインガ 14.アダム・アシュレー・クーパー
15.カートリー・ビール


16.Saia Faingaa (ステファン・モーアーと交代 75分)
17.SalesiMa’afu (Sekope・Kepuと交代 75分)
18.ロブ・シモンズ (ダン・ベッカッマンと交代 53分)
19.Ben McCalman (RadikeSamoと交代 59分)
20.ScottHigginbotham (ロッキー・エルソムと交代 70分)
21.ルーク・バージェス (ウィル・ゲニアと交代 75分)
22.ロブ・ホーン

 8/28 ワラビーズ vs オールブラックス トライネーション最終戦 観戦記

  オーストラリア強い!オールブラックス2連敗。ロビー・ディーン恐るべし。といった見出しが前半終わったところで
頭に浮かびました。前回の南アフリカ戦で破れたときより今回の敗北は非常にヤバイ感じになった気がします。
今回はカーターも、リチャードマッコウもいてワラビーズに手も足も出なかった、圧倒されて負けた感じなので
ワールドカップでの決勝が非常に不安に思わせるゲームとなりました。

 しかし言い訳ではないですが、いろいろなHopeはあります。前半に20-3と17点差もつけられたにもかかわらず
後半に入ってゲームプランを代えて20-20まで追いついたこと、ワールドカップでの決勝戦はニュージーランドの
オークランドで行われること。そしてよく言われるようにトライネーションの結果とワールドカップでの結果は違うもの
だということ。WCの年はこれまでオールブラックスはとても調子よく、ヨーロッパ遠征を制覇、トライネーションも全勝
などしてWC優勝最右翼といわれ続けてきました。前回のフランス大会でもその年のトライネーションを快勝し、敵無し
状態で挑んだワールドカップだったのにもかかわらず完全に楽勝と思われたフランスにあっさり逆転負けを喫した
のですから今回の敗北は逆に絶好のWake−UpCallと言われるでしょう。

 それにしてもロビー・ディーンは今のオールブラックスに勝つ為の手段を十分把握しているようです。前回
オークランドでの敗北、だけど後半には互角の勝負が出来たこと、そして先週の南アフリカの戦法を見て
このゲームに修正と強化をメンバーに徹底させたと思わせるような内容でした。

 また今回のメンバー起用もロビー・ディーンの思惑通りにかなったようで、No。8のRadikeSamoの大活躍は
まさに期待通りの結果といえるでしょう。そのほかゲーム前に急遽ジェームス・オコーナーが使えないことから
アダム・アシュレー・クーパーを左Wingに入れたのもバッチリ。いつもならセンターに起用され、コンラッド・スミスや
マアア・ノヌのマークに忙しかったアシュレークーパーが解放されたようにWingで生き生きとその実力を発揮、
特にデフェンスでは素晴らしい働き。対するABの11.ザック・ギルフォードは前半途中で見るからにマッチアップ
としてはアシュレークーパーに及ばないように思えました。

 それにしてもチームとしてワラビーズは先週の南アフリカが見せたデフェンスを更に上回るような強くて早い
デフェンスを引き、まるでデフェンスタックルが次から次へと襲い掛かってくる波状デフェンスといった感じ。
これだからABのボールをすばやく展開して繋ぎながらアタックラインをあっという間に押し上げていく戦法が
次から次へと途切れました。パスを受けると同時に強力タックルが襲いかかり、それを逃れてもパスできる
体勢に成れない、またパス先を見てもどこにも完璧なマークが張り付いていてパス先を探してしまうか無理な
パスをだしてしまう。そしてブレイクダウンになるとワラビーズの集散がABのそれを圧倒。ボールをどんどん
奪われていきました。

 またアタックにおいてもクェイド・クーパーが今回はオークランドのゲームと違い本領発揮といった感じに戻り
マジカルハンドのパスが随所に見られ、ウィル・ギニアのキックプレイも要所要所で非常に効果的な役目を
果たします。ABは前半に始まって直ぐにキエラン・リードがくるぶしを痛め、そしてアダム・トンプソンも37分
には腕の故障で下がったことでABフランカー陣が崩れたこともありますが、ワラビーズのフランカー陣の
活躍はSamoを筆頭に素晴らしいものでした。このゲームでは世界最高のNo。7がマッコウからデビッド・
ポコックに移り変わることをしっかり証明したようにも思われるプレイがこれも随所に見られました。

 そしてワラビーズの恐れられていたバックス陣もこの日はその実力を十分発揮、ゲニア、クーパーを始め
11.ディグビー・イオアニ、15.カートリー・ビールが縦横無尽動き回ってABのデフェンスを崩し回りました。
これでABのタックルミスは前半で10個にも及びどんどんテリトリーを奪われる結果となりました。これに対して
ABのバック3の活躍は全くといっていいほど見られず、ムレアイーナのカウンターアタックもワラビーズに
とってはお見通しのような感じで直ぐにデフェンスラインにかかります。そしてボールが展開されないので
しかたがないのですが、Wingのサックにしては前述のようにアシュレークーパーにとことん先を越され、
そしてコーリー・ジェーンにいたっては全くといっていいほど攻撃参加でその姿を見ることがありませんでした。
頼りのカーターにしろそのキック・プレイでは精細を欠いたように思われました。それよりもカーターもこの日は
ワラビーズのアタックを食い止めるデフェンスのほうに忙しかったと思われます。

 そのカーターがゲーム当初からワラビーズデフェンスに襲われます。ゲーム前のハカはABにとって
敵地で見せるのは珍しいカパ・オ・パンガだったのですが、その気合もゲーム始まればワラビーズのほうが
勝っていたことが直ぐに分かりました。カーターのキックオフから始まったゲームはABが最近のゲームで
見せる速攻のお株を奪うような猛襲を見せ付けます。

 キックオフボールを蹴り返してAB陣に戻した後ワラビーズ全員がセンターラインに猛ダッシュで駆け
上がりカーターがボールを持って走りこんでくるのに襲い掛かり、ブレイクダウンとなったところに一体
何人のワラビーズがいるのか分からないぐらいの人数があっという間にカーターの体の上に押し寄せ
ボールを奪います。そして次のリチャード・マッコウが駆け寄ったラックにもワラビーズフランカー陣が
押し寄せ、ペナルティーを取ります。このボールはAB陣地22mライン上のサイドラインに蹴りだし
ワラビーズラインアウトとします。このラインアウトをミスったワラビーズでしたが、再びカーターが22m内
から前方に蹴り出そうというところを3;ベン・アレキサンダーが襲い掛かりチャージ・ダウン。そのまま
ボールを追いかけるようにワラビーズフォワードがゴールライン前に押し寄せ、ABゴールライン前で
ラックが出来ます。ABは何とかこのゴールラインを守り通しますが、ラックでペナルティーを取られ
クエイド・ク−パーが楽々先行の3点を挙げます。

 ABもこのワラビーズの勢いにあわせるようにアタックを仕掛けますがこれに対するデフェンスが
非常に強い!そしてギニア、カートリー・ビールなどが上手くキックを絡ませたり、マジカルハンド、
そしてマジカルランをこの時間ぐらいから披露し始めたクェイド・クーパーのアタックもあってどんどん
テリトリーを奪って行きます。そしてAB陣地に入るとABが自陣から攻めあがるところに猛烈なデフェンスを
見せABのハンドリングエラーを誘います。

 そしてワラビーズがAB陣地に居座り始めた10分、AB陣地22m内まで入り込んで出来たラック
からのボールをギニアがバックスにパスを出す。このときキエラン・リードがくるぶしを痛めて22m内
に倒れている。その彼の横をデフェンスラインをかいくぐるようにクェイドクーパーがブレイクラン。
そしてWingのアシュレーク−パーにパス。アシュレ-クーパーは一つステップを踏んでフルバックの
ムレアイーナを交わしゴールラインに突っ込みます。これに対しゴールライン上を守るピリ・ウィープが
彼に覆いかぶさるようにタックル、そして右手を引き戻すように彼の体をゴールライン手前まで引き
倒そうとします。これに対してアシュレ-クーパーは何とか左手片手でタッチダウンを試みますが、ここに
先ほど抜かれたムレアイーナが滑り込んで戻ってきて彼の左手に絡みつきボールを奪ってしまいます。
当然ビデオ判定になりましたが、スローモーションでは確かにムレアイーナがタッチダウン寸前ボール
を奪い取っていました。

 これでキエラン・リードは負傷した為ビクター・ビットに代わり、アダム・トンプソンも左手上腕に
大きなバンテージを巻かれ負傷したことが伺えました。見事なトライセイバーが見られましたが、
ワラビーズの攻勢は尚も続きゴールライン手前5mのワラビーズスクラムの後何度かゴールライン
手前でラックが続かれた後ABはこのボールを奪えず、最後はラックからボールを持って駆け込んだ
ウィル・ギニアにトライを許す結果となりました。まだ開始から15分ですが、ワラビーズが10−0とリードします。

 ABがこの後得点できたのは23分になってから。この間も両軍の高速スピードで展開する攻防が続き
ますが、その中でもワラビーズのデフェンスラインが強い為ラックを作りながら前進するピック&ゴー
を使いピリ・ウィープがラックから左右にボールを振り分ける所にワラビーズもたまらずオフサイドを犯し
カーターがこのペナルティーをキックでしっかり決め10−3とします。

 しかしこの3点も直ぐに取り戻されます。ワラビーズはバックス陣のキック、そして巧みなステップで
ラインブレイクしていくアタックを交えAB陣地へとテリトリーを奪っていきます。またこの時点になると
断然ワラビーズの気迫あるプレイが目立ち、ABはどうしても逃げの攻撃に陥る感じがしました。
そして高速アタックの中ABのタックルミスも誘い30分にはノヌのアーリータックルのペナルティー
から3点をクーパーがキックで決めて13−3となります。

 そしてワラビーズの攻勢が圧倒的だと解り示すトライがこの直後でます。カーターによるキックオフ
後返しのキックとしてギニアがセンターライン付近上空にハイボールを蹴り上げます。これを取りに
入ったのがABマッコウ、ワラビーズポコックという両軍のNo7.そしてこれに勝ったのがポコックでした。
ポコックがハイボールをマッコウと絡まりながらも上手くキャッチするとそのまま少し走りこんでラックと
なります。この時点でAB陣地にはあまり人数が戻っていませんでした。ラックからすぐさまボールを
出してNo.8のSamoが受け取ると前方に向けてデフェンスが甘いことを見て取って一人でAB陣地に
駆け上がり始めます。これに追いすがるようにアダム・トンプソンがSamoに手を掛けますが、これを
Samoは払いのけるようにトンプソンを張り倒し、その後はゴールラインまで独走状態になります。

 このゲームでワラビーズ史上最年長の35歳で先発に抜擢されたSamoですが、さすがにフィージアン
だけあって巨体でもボールを持たして走らせたら誰も追いつけない、止められないものがあります。
ゴールライン手前でコーリー・ジェーンとムレアイーナに追いつかれ両側からタックルを受けますが、
ゴールライン手前5mでのタックルでは勢いのあるSamoを止められません。3人倒れ込んでSamoの
トライとなりました。本当にこのトライはこの日のワラビーズの勢いを象徴するものでした。これで20-3と
なり、またアダム・トンプソンが負傷でアリ・ウィリアムスと代わってフランカーが2人もいなくなり、
何とか前半終了までに得点したいABの反撃を食い止めるワラビーズを見ると後半にABの反撃が
あるとはどうしても期待が出来ませんでした。

 しかし後半に入ってABは見事に攻撃パターンを替えて反撃に出ます。それは前半ワラビーズの
アタックにつられるようにキックボールを使ってテリトリーを取りに入ったり、ボールをすばやく展開する
アタックを止め、ボールを保持しながらラック&ゴーでジワジワゆっくりと前進していく戦法です。
そうだこれがあったと思わせる戦法です。観戦者にとってはスピードのない迫力に欠く戦術ですが、
テストマッチらしい戦法といえばそうです。

 前半ボールを蹴り出しては逆アタックを受けていたり、パスを展開するうちに強力デフェンスタックルを
受けてハンドリングエラーやノックオンでボールを失っていたのがなくなりました。そして47分にその
ラックでのペナルティーから3点を返した後連続トライを挙げてなんと前半に17点差ついていたのを
同点まで戻すことにABは成功します。この辺りはすごいオールブラックスです。

 3点を返した後オールブラックスはセンターライン上のラインアウトから始めて延々4分間に及ぶ
ラック&ゴーを続けます。ジワジワと22mラインまで前進して連続ラック&ゴー26回目になってバックスに
ボールを展開。カーターがラインブレイクした後パスを受けたコンラッド・スミスがゴールポスト下に
飛び込みまず7点返します。これで20−13。

 その後AUS陣地にピリ・ウィープのキックボールで入り込んだABは再び22mライン上からピック&
ゴーを始める。一旦ラックの後のABアタックでオブストラクションがあってAUSスクラムになります。
ここでこれまで沈黙を強いられていたABサポータからオールブラックスコールが上がります。この
声援に押されてか?AUSスクラムを押し返してABボールのスクラムにとって替えます。これで
オールブラックスコールが更に高まりました。その声援に答えるようにスクラムの後数回のラック&
ゴーをした後バックスにボールを展開したところでマアア・ノヌが相手デフェンスラインの動きの逆を
行くような巧みな動きを見せてゴールポスト下にトライをあげました。

 この日ABのバックスではセンターコンビのコンラッド・スミスとマアア・ノヌだけがワラビーズの攻勢
に対して柔軟にそして激しく順応していたように思えました。このトライでついに同点追いついたABで
いつもならこの勢いが倍増するように畳み掛けてくることを承知のようにワラビーズはすぐさま反撃に
出ます。これを先導したのは今年スーパー15の決勝戦でも決定的トライの先導をしたウィル・ギニアでした。

 クーパーのキックオフから再会したゲームはすぐさまワラビーズ自陣から攻めあがるラック&ゴーに
なります。センターライン上でワラビーズのラック&ゴーが2-3回行われた後ギニアがラックの脇に
隙が出たのを見逃さずボールを持って駆け上がります。ケビン・メアラムがタックルにかかりますが、
ギニアはこれを交わし、その後に襲い掛かるムレアイーナをステップで交わし横に続くディグビー・
イオアニにパス。イオアニはこれまた鋭いステップでコーリー・ジェーンを交わし更に横に走りこんできた
カートリー・ビールにパスを出して、その後はデフェンスがABゴールライン前には誰もいなくなって
ビールが楽々トライをあげます。

 この際コンバージョンキックをク−パーが外して25−20の1トライで逆転可能圏内に留まり、時間も
63分でゲーム勝敗の行方がますます分からなくなり球場も盛り上がります。この後ABの逆襲が
見られましたが、それもワラビーズのデフェンスが盛り返しボールをAB陣地に戻します。そして
ワラビーズのアタックをABも守るのですが、70分にAB陣地10mのところでペナルティーを犯します。
これをクーパーが再びペナルティーキックを外してワラビーズも安全圏に逃げ切れません。

 けれどこの後の10分間をワラビーズは再び気迫溢れるデフェンスを繰り広げ、またラック&ゴーで
ボールを保持しながら時間を稼いで25-20のまま逃げ切ることに成功しました。これによって
ワラビーズにとってはトライネーションのカップを2001年以来始めて手中に収めることとなりました。

 ワラビーズ 25−20 オールブラックス (前半 20−3)


 


 

 

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