今週のNZラグビー

8/21 vs スプリングボックス戦 第3戦


15.マリ・ムレアイーナ
14.コーリー・ジェーン 13.コンラッド・スミス 11.ジョー・ロコソコ
12.マアア・ノヌ 10.ダニエル・カ−ター
9.ジミー・コーワン

8.キエラン・リード
7.リチャード・マッコウ 6.ジェロモ・カイノ
5.トム・ドネリー 4.ブラッド・ソーン
3.ベン・フランクス 2.ケビン・メアラム 1.トニー・ウッドコック
 

 
16.コーリー・フリン
17.ジョン・アフォア (ベン・フランクスと交代)
18.サム・ホワイトロック (トム・ドネリーと交代)
19.ビクター・ビット (ジェロモ・カイノと交代)
20.ピリ・ウィープ (ジミー・コーワンと交代)
21.アーロン・クルーデン 
22.イスラエル・ダグ (ジョー・ロコソコと交代)


1.GurthroSteenkamp 2.ジョン・スミット(C) 3.Jannie du Plessis
4.Flip van der Merwe 5.ビクター・マットフィールド
6.シャック・バーガー 7.ジュアン・スミス
8.ピエアー・スピース

9.FrancoisHougaard
10.モーネ・ステイン 12.ジーン・デ・ビリエー
11.ブライアン・ハバナ 13.Juan de Jongh 14.JP Pietersen
15.ジオ・アプロン


16.ChiliboyRalepelle 
17.CJ van der Linde (Jannie du Plessisと交代)
18.ダニー・ロッソウ (Flip van der Merweと交代)
19.FrancoisLouw (ジュアン・スミスと交代)
20.リッキー・ジャニュアリー (FrancoisHougaardと交代)
21.ブッチ・ジェイムス 
22.ワイナンド・オリビエー 
 

 8/23 スプリングボックス vs オールブラックス 第3戦 観戦記

 オールブラックスはゲーム終了間際の最後の3分間に南アフリカの希望を打ち砕きました。最後の最後まで
とてもすごいテストマッチらしい、今季最高のゲームはオールブラックスが劇的な2トライで幕切れになりました。

 75分まで南アフリカが22−17でリードしていたのをオールブラックスキャプテンのリチャード・マッコウが
右隅に3人のタックラーに絡まりながらもゴールラインにボールイをタッチダウンさせます。これがビデオ判定に
なりますが、スローモーションでさえ非常に難しい判定。マッコウがボールをタッチダウンするのと右足がハバナ
にタックルされて地面につくのがほぼ同時。TV解説のジャスティン・マーシャルでさえ”これはノートライでしょう。”
と言っていたのがビデオレフリーはノートライになるはっきりとした理由も見つからないとの事でトライが告げられます。

 そして得点はこの時点で22−22の同点になるのですが、右端からのカーターのコンバージョンが決まれば
よかったものをカーターのキックボールは大歓声の元、外れていきます。そして南アフリカは78分、キックオフと
同時に猛ダッシュでAB陣地に入り込み完全にドロップゴール狙いのアタック。しかしキックオフボールも南アフリカ
が取ったにも関わらず最初のラックでボールをオールブラックスに奪われる。そしてこのラックからのボールを
受けたマアア・ノヌがこの日最高のラインブレイクを見せます。二人の南アフリカフォーワードの甘いタックルを
つきぬけ自陣10mのところから敵陣へ走りこむ。この時点でデフェンスはフルバックのジオ・アプロンだけ。横には
WINGのJPピエタ−ソンが迫る。22mラインに達するときにサイドライン際を後半55分からロコソコと交代して
入ったイスラエル・ダグが駆け上がってくる。ノヌはアプロンのタックルを受けながらJPの頭を越えてダグにパス。
これがきれいに繋がりダグは片手を挙げながらのトライ!!カーターのコンバージョンキックが蹴られたと同時に
終了サイレンが鳴り響きゲームオーバー。

 この日100テストキャップという偉業を成し遂げた南アフリカキャプテンがうなだれる姿が印象的でした。彼の心
にリベンジの炎が燃え盛らないことを願う気持ちにもなりました。この劇的なシーンの逆のことが来年のワールドカップ
決勝で起こらないように願いたい想いです。そう思うのもこのゲームの両軍のプレイは本当に完成されたプレイだった
と見られました。オールブラックスは勝つことには最も難しいといわれていたスタジアムで素晴らしいゲームを見せました。

 今のオールブラックスには付け込む穴は見当たらないでしょう。このゲームでは少しミスもあり、審判のミスジャッジも
ありましたが、メンバー的には最強に思えます。この調子が来年まで続くでしょうか?また恐らくこの南アフリカを初めと
してオールブラックスの戦術は隅から隅まで分析されることでしょう。また南アフリカは今回7番に今年初めてジュアン・
スミスが入り、ブレイクダウンで攻防はオールブラックスと互角でした。また他のフランカー2人も最高の出来を見せ、
全体的なデフェンスは今季最高のものだったでしょう。この状態に加えて南アフリカには今回出場していないロックの
バッキー・ボッサ、世界最高のハーフバックといわれるフォーリエ・デュ・プリーズ、センターのジャック・フォーリエ、
そして今フランスから出られないフランシス・ステインなどが戻ってきたら南アフリカの復活は大いに予想されます。
今回の劇的幕切れの逆パターンが来年オークランドで見られないことを願いたい心境にもなってしまいました。
それほど今回のオールブラックスの勝利は南アフリカのプレイヤーもしかり、コーチ陣、そしてサポーターにも打撃を
与えたと思います。

 このゲームは今年からナショナルスタジアムになったFNBスタジアムに9万4千人という大観衆が集まり行われました。
このサポーターからの大歓声がまたすごくてオールブラックスのハカの声は全く聞き取れないほど。サポーターの
オー・レーオ・レオ・レオレーというサッカー式の大歓声でハカが蹴散らされるのを見て南アフリカ選手の中には薄ら笑み
を浮かべるヤツもいるほどでした。ジョン・スミットの100キャップ達成ということもあいまってこのゲームは断然南アフリカ
勝利に向けてシナリオが進みそうでした。

 それでもオールブラックスは今年連勝中のスタイルを一切緩めないスタートを切ります。これまでと同じようにキックオフ
から速い展開に持ち込めるようカーターが低くて速い玉足のキックでゲームが始まります。ABの攻撃スタイルは今日も
ボールを回して早いテンポで攻めていく。これに対して南アフリカはどのように出てくるか注目されたハーフバックの
Hougaardはフォーリエ・デュ・プリーズのスタイルをそのまま引き次ぐようにボールを直ぐに前方に高く蹴り上げる。
これにほとんど全員が猛ダッシュでボール落下地点になだれ込む。これまでの2ゲームではこの後ABのカウンター
アタックが南アフリカのデフェンスラインをすり抜けたり、パス回しが速く、そして上手く繋がってどんどんSA陣地へと
入り込めていたのが、この日は初っ端から南アフリカのラインデフェンスが強力でしっかりしているのが分かります。
 そこでやむなくABバックス陣もデフェンスライン突破が無理ならキックでボールを敵陣へと送ります。

 ゲーム開始の雰囲気では断然南アフリカムードだったのが直ぐに南アフリカ自身のミスで流れをつかめなくなります。
せっかく南アフリカボールのラインアウトを取ったのに最初のラインアウトでノットストレイト、2回目のラインアウトでは
投げ入れるのが遅延行為と審判に取られ易々とボールをABに戻します。そしてABのアタックにハイタックルで
ペナルティーキックを謙譲してまず先行するのはオールブラックスとなります。

 しかし南アフリカもそんな小さなミスの傷を広げることなく直ぐに建て直し、デフェンスで踏ん張りボールを奪ってからは
南アフリカも出来るだけボールを回して自陣からアタックを仕掛けてきます。10分にはブレイクダウンでペナルティーを取り
3−3の同点に戻しますがここから後はすさまじい攻防がズーット続きます。この時点でトライを取るのは非常に難しい、
小さなミスがペナルティーに繋がり、両軍の世界トップクラスキッカーによる点の取り合いというテストマッチらしいゲームが
予想されました。

 その通り3-3の同点の後は13分にステインがセンターラインから5mほど入ったところからキックを1本決まると、
カーターが一回ペナルティーキックをゴールポストに当て外しますが、直ぐ後のラックでの南アフリカペナルティーを
カーターが決め6−6。

 南アフリカのデフェンスも良かったのですが、もちろんオールブラックスのデフェンスも強力。なかなかラインブレイクは
容易じゃない。そこでステインは20分過ぎにお得意の長距離ドロップゴールをセンターライン付近から試みたりもします。
このドロップゴールが外れた後、ABの22mライン内ドロップオフから南アフリカは再び猛攻。ABのラインデフェンス前で
すばやくボールを回します。そしてAB22m内に入ったラックでABフォワードがペナルティー。このペナルティーボールを
ステインは蹴らずに直ぐに動かします。そしてフォワードが22m内になだれ込み、シャック・バーガーが最後はABの
デフェンスを突き破りゴールラインにタッチダウン。ここで南アフリカが7点差をつけ13-6となります。

 しかしこれで流れが一気に南アフリカに向かうことなく、ABも逆襲のアタックを見せます。そしてセンターライン付近での
ペナルティーをカーターがキックでしっかり決めて13−9、その後直ぐ今度は南アフリカのアタックにABのペナルティーが
出てまたもや3点が加えられ16−9のトライが難しい、激しい守りあいのゲームに戻ったかに見えました。

 ここにこの日初めてと言っていい強力なラインブレイクをABのベテランが見せてくれます。南アフリカスクラムから始まる
キックボールをコーリー・ジェーンが受けると自陣からカウンターアタック。ラックから上手く、すばやくボールが出されると
36歳のブラッド・ソーンが力任せのライン突破。センターライン付近から22mライン手前まで前進。そしてラックからの
ボールを再びすばやく出して、今度はバックスにボールが回るのですが、そのバックスはカーター/マアア・ノヌの2人だけ。
この2人がパスを繋いだ後、横に並走するのはフォワード、しかもロックとプロップ2人。けれどこのロックのトム・ドネリー、
プロップのトニー・ウッドコックにパスが繋がる以前にすでにカーター、ノヌのパスがすばやくそして、横に大きなパスだった
ことから南アフリカデフェンスもついて来れず、ウッドコックにパスが繋がった時点でウッドコックは楽々駆け足でゴール
ラインに入り込めトライを取ります。このコンバージョン・キックをカーターがミスって16−14の2点差南アフリカリードで
後半へと入って行きます。

 後半入ってオールブラックスは更にテンポを速めていくかと思っていたら、それに対して今日の南アフリカはデフェンスが
更に強力になっていきました。そして後半は両軍のキッカーの小さなミスが大きく勝敗に影響していき、またレフリーの判断が
またゲーム終了後物議をかもし出しそうな場面が出てきます。

 まず南アフリカのキックオフで始まった後半。そのキックオフボールをとりそこなったABは南アフリカの猛攻を早速受けます。
南アフリカのスクラムボールを踏ん張ってABサイドに戻したのをカーターの逃げのキックがチャージされます。トライは
免れますが、再びゴール前で南アフリカスクラムとなったところでABはペナルティーを犯し、3点謙譲。19−14になります。

 オールブラックスは反撃に出ますが、南アフリカの硬いデフェンスの前でボールを回すスピードが緩められる。何度も
ラックでボールの動きが止まります。そしてノックオンなどでボールを奪われ反撃を食らいます。この南アフリカの反撃も
ボールを回して攻め込んでくるのですが、完成度はやはりオールブラックスのほうが高い感じ。南アフリカのそれは最後には
パスミスやノックオン、サイドラインに押し出される事がオールブラックスより多い感じでした。その中で55分には南アフリカの
パスをつなげてラインブレイクするのもやっと上手く行ったか?と思われたけど主審が最後のパスが前に出されたものとして
判断して南アフリカの決定的チャンスを奪うこともありました。(実際わずかに前パス。けれど見逃されてもおかしくないパスでした。)

 オールブラックスは南アフリカの硬いデフェンスの前でスタイルを変えずにアタックを繰り返します。その中次第に突破口も
出てくるようになります。53分に南アフリカの猛攻をマッコウがタックルでボールを奪い、カーターがサイドライン際を駆け
上がってゴールラインわずか手前まで行きますが押し出されます。

 南アフリカもABの反撃に対してスピードを緩める策に出たり、自陣から大きなキックで敵陣に戻すことを試みてきます。
そのスピードを緩める策の一つとして58分、今年南アフリカの強力な武器として予想されたラインアウトからのドライビング
モールがこの日始めて見られます。そしてこのモールでABがペナルティーを犯してステインのキックが決まり、得点差は
8点差の22-14となります。この時点で2つのトライを取って逆転するのは難しそうに誰もが思ったことでしょう。

 しかしこの後南アフリカに取っては悪夢のようなことが続きます。8点差がついた直後のABの逆襲を自陣で食い止めボールを
奪った南アフリカでしたが、ステインのAB陣地サイドライン向けて蹴りだしたボールが大きすぎてゴールラインを切ってしまい
あっさりもとの南アフリカ陣地へボールは戻されABスクラムになります。このスクラムからブラインドサイドの右サイドライン際
をコーリー・ジェーンが個人技でゴールライン手前までもって行きますが、ゴールライン直前でサイドラインに押し出されます。
この南アフリカゴールライン手前のラインアウトをゆっくりと確実にしているものをこの時はなぜかABのラインが作られる前に
クイックで投げ入れます。このボール処理を南アフリカフォワードがミスってペナルティーを犯します。これでカーターが3点
キックで返し、元の5点差に戻ります。

 南アフリカはこの後キックアンドチェイスを使ってなるべくAB陣地でゲームを進めようとします。Hougaardとステインが
ハイキックボールを連発します。このステインのハイキックボールを自陣22mライン手前でカーターが珍しくキャッチミス。
南アフリカにとっては絶好のアタックチャンスが訪れます。しかしこの南アフリカスクラムで痛恨のペナルティー。あっさり
ABにボールを渡します。まだミスは続きABの猛攻を自陣10mのところで止めてABからペナルティーをとったにもかかわらず、
またしてもステインのこのサイドラインに蹴り出せば良いだけのキックをミスってABボールのスクラムへと変えてしまいます。
そしてこのスクラムの後のABラックで南アフリカはペナルティー。南アフリカ陣地中央からのペナルティーキックとなり、
決まればABは2点差まで詰め寄ることが出来ました。しかしここに来てカーターがこのキックを外してしまいます。時間は
73分となり残り7分で5点差。オールブラックスはトライが欲しい状況に陥ります。

 ここからオールブラックスの奇跡が始まることになりますが、22mライン内の南アフリカドロップオフボールを受けた
コーリー・ジェーンがまずはアタック。そしてオールブラックス全員の猛攻が続きますが、南アフリカ22mライン上のラックで
南アフリカのデフェンスがペナルティー。このボールを後半途中から入ったイスラエル・ダグがすぐさまトライ狙いに切り替え
22mライン内へと走りこむ。そしてタックルを受ける直前にムレアイーナにパス。このアタックはデフェンスに停められますが、
完全にこのダグからムレアイーナのパスは前パスでした。これを主審、線審共に見逃します。そして22mライン上のABラックで
一旦ボールの動きが止まったようになりますが、このラックからのボールからマッコウのトライが生まれます。ラックから
ボールを受けたカーターが上手くコンラッドスミスに繋ぎ、そしてコーリー・ジェーンにパス。コーリー・ジェーンはそれまでに2度
単独でゴールラインまで突き進んでいることもあって、相手デフェンスが3人ジェーンにひきつけられます。そこでジェーンは
右端に余っていたマッコウにやむなくといった感じでパス。22m内でパスを受けたマッコウはもうひたすら一人でゴールライン
を目指すのみ。右隅に向かって走りこみ3人のタックラーに絡まれながらも劇的なトライを取ります。

 この時間までオールブラックスは南アフリカのデフェンスに何度も跳ね返されて後半はトライを取るのが無理なように
思い掛けていたのをキャプテン、マッコウが執念で取ったようなトライでした。けれどカーターのキックが外れてドラマは
まだ続いたわけです。

 南アフリカ 22−29 オールブラックス (前半16−14)

 



 

 

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